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金沢市の古民家・町家を活かした店舗リノベーション – 伝統と現代の調和

石川県金沢市を拠点に店舗内装デザイン・店舗設計を手がける株式会社インテリア縁です。当社では金沢市や野々市市を中心に、古民家や町家を活かした店舗リノベーションを多数手がけてきました。歴史ある建物に新たな命を吹き込み、伝統と現代が調和した魅力的な空間づくりをサポートしています。
 

金澤町家の特徴と魅力


金沢には「金澤町家」と呼ばれる歴史的建築物が数多く残されています。これは町家、武士系住宅、足軽住宅、近代和風住宅など、多種多様な歴史的建築を総称したものです。金沢市内には旧城下町域に約6,000棟弱の町家が現存していると言われていますが、残念ながら毎年100棟ほどが取り壊されているのが現状です。
金澤町家の特徴的な意匠としては「サガリ」と呼ばれる庇や、木虫籠(きむすこ)と呼ばれる石川県金沢の伝統的な格子があります。木虫籠は竪子を断面にした時に台形になるようにつくられており、外からの視線を効果的に遮りながらも、内側からは外の様子がよく見える工夫がされています。また、雨の多い金沢の気候に合わせて発展してきた建築様式は、現代においても住み心地の良さを感じさせる魅力があります。
金澤町家には、都市に集まって住まう知恵や、自然と共生する暮らしの文化、職人の匠の技が凝縮されています。これらの歴史的建築物を店舗として再生することで、金沢ならではの風情ある空間を創出することができるのです。
 

店舗リノベーションのメリット

古民家や町家をリノベーションして店舗として活用することには、いくつかの大きなメリットがあります。
まず第一に、新築では決して実現できない独特の雰囲気や歴史性を持った空間を創り出せることです。古民家特有の太い梁や柱、時を経た木の風合いは、訪れる人に強い印象を与え、記憶に残るお店となります。特に金沢を訪れる観光客は、地域の歴史や文化を体験できる場所を求めているため、古民家・町家を活かした店舗は観光資源としても高い価値を持ちます。
第二に、既存建築物を活用することで、新築と比較してコストを抑えられる可能性があることです。また、金沢市では金澤町家の保全・活用を推進するための補助金制度も用意されています。「金澤町家再生活用事業」では、金澤町家を本来の姿に修理する際にその経費の一部を補助しており、店舗の用途でも補助率50%以内で上限500万円の助成を受けることが可能です。
第三に、サステナブルな観点からも、既存建築物を壊さずに活用することは環境負荷の低減につながります。金沢の歴史的景観を保全しながら、新しい価値を創造することができるのです。
 

リノベーション事例と成功のポイント

金沢市内では、古民家や町家を活かした店舗リノベーションの成功事例が数多く見られます。例えば、ひがし茶屋街や主計町茶屋街周辺では、伝統的な茶屋建築を活かしたカフェやレストラン、ギャラリーなどが人気を集めています。特に外国人観光客からは、日本の伝統的な建築と現代的な機能が融合した空間に高い評価が寄せられています。
成功事例に共通するポイントとしては、以下の要素が挙げられます:

1. 建物の特徴を最大限に活かす

リノベーションを行う際は、古民家や町家が持つ独自の特徴を最大限に活かすことが重要です。例えば、土間や坪庭、格子窓、太い梁などの特徴的な要素を残しながら、それらを空間デザインの主役として活用します。金沢市安江町のレンタルスペースでは、明治期に建築された履物卸問屋だった町家の伝統的な形態をそのままに、屋根瓦、漆喰壁、下見板張りを修理し、魅力的な空間として再生されました。

2. 現代的な機能との調和

歴史的な要素を残しながらも、現代の店舗として必要な機能性を確保することが重要です。特に水回り設備や空調設備、照明などは、デザイン性と機能性のバランスを考慮して設置します。例えば、伝統的な意匠に合わせた照明器具を選ぶことで、違和感なく現代的な明るさを確保することができます。

3. 地域の素材や技術の活用

金沢には九谷焼や金箔、加賀友禅など、伝統的な工芸品が豊富にあります。これらの地域の素材や技術を店舗デザインに取り入れることで、より地域性を感じられる空間となります。例えば、カウンターに金箔を施したり、壁面に加賀友禅の図案を取り入れたりすることで、金沢らしさを演出できます。
 

ポイント!

古民家・町家リノベーションでは、建物の構造や特徴を十分に理解し、その魅力を引き出すための専門的な知識と技術が必要です。当社では、伝統構法に精通した設計士と職人が連携し、建物の価値を最大限に活かしたリノベーション提案を行っています。

 

 

リノベーション計画時の注意点

古民家や町家をリノベーションして店舗として活用する際には、いくつかの注意点があります。計画段階から以下の点に留意することで、スムーズなプロジェクト進行が可能になります。

1. 法規制の確認

金沢市には「金澤町家保全活用推進区域」が設定されており、この区域内で金澤町家を大規模に改修もしくは解体しようとするときは、90日前までに届け出が必要です。また、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)内の建物には、さらに厳しい規制があります。用途変更に伴う建築基準法の確認申請や消防法の規制など、各種法規制を事前に確認しておくことが必要です。

2. 構造面の調査と補強

古民家や町家の多くは現行の耐震基準を満たしていないため、店舗として安全に使用するためには構造調査と必要に応じた耐震補強が必要です。特に金沢は雪国であるため、積雪荷重に対する検討も重要です。構造調査の結果によっては、予想以上の補強工事が必要になることもあるため、予算に余裕を持たせておくことをおすすめします。

3. 断熱・防音対策

古民家や町家は断熱性能が低く、特に金沢の厳しい冬を快適に過ごすためには、断熱対策が不可欠です。しかし、過度な断熱工事は建物の風合いを損なう可能性もあるため、見えない部分での断熱強化や、床暖房の設置など、建物の特性に合わせた対策を検討します。また、店舗として使用する場合は周辺環境への配慮として、適切な防音対策も必要です。
 
こちらは概算金額です。現場によって前後しますのであくまで参考としてご覧ください。

リノベーション項目 費用目安 内容
外観修復 150〜300万円 屋根瓦の葺き替え、外壁の漆喰塗り、下見板張りの修理、格子の復元など
構造補強 50〜200万円 耐震補強、基礎補強、柱・梁の補修・交換など
内装工事 200〜400万円 内壁・床の改修、建具の修理・交換、照明設備の設置など
設備工事 150〜300万円 電気・給排水設備の更新、空調設備の設置、厨房設備の設置など
店舗デザイン 50〜150万円 店舗レイアウト設計、サイン計画、什器・家具の製作・設置など

「参照:金澤町家情報館」
 

金沢市の地域特性を活かした店舗展開

金沢市 兼六園
金沢市の各地域には、それぞれ特徴ある町並みや文化があります。店舗リノベーションを計画する際は、出店予定地の地域特性を理解し、それを活かした店舗展開を考えることが重要です。

1. 中心市街地(香林坊・片町エリア)

金沢の商業の中心地である香林坊・片町エリアでは、買い物客や観光客が多く訪れるため、アクセスの良さを活かした店舗展開が可能です。このエリアでは近代和風住宅や町家が点在しており、周辺の商業施設とは一線を画した独自性のある店舗として差別化が図れます。例えば、昭和初期の町家をカフェやセレクトショップにリノベーションした事例があり、伝統と現代が融合した空間として人気を集めています。

2. 茶屋街エリア(ひがし・主計町・にし)

金沢を代表する観光地である茶屋街では、伝統的な茶屋建築を活かした店舗が観光客に高い人気があります。特にひがし茶屋街は重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、外観の保存が義務付けられていますが、内部を現代的にリノベーションすることで、伝統的な外観と現代的な機能を両立させた店舗展開が可能です。茶屋街では、金沢の伝統工芸品を扱うショップや、金沢の食文化を体験できる飲食店が特に相性が良いでしょう。

3. 寺町・武蔵エリア

寺院が集まる寺町や、かつての武家屋敷があった武蔵エリアでは、落ち着いた雰囲気を活かした店舗展開が効果的です。このエリアでは、武家系住宅や近代和風住宅が残されており、その静けさを活かした文化的な要素を持つ店舗(ギャラリー、工芸品店、古書店など)や、ゆったりとした時間を過ごせるカフェなどが適しています。
 

エリア 特徴 相性の良い店舗
香林坊・片町 商業の中心地、若者や観光客が多い カフェ、セレクトショップ、雑貨店
茶屋街 伝統的な茶屋建築、観光客が中心 工芸品店、和カフェ、体験型店舗
寺町・武蔵 寺院・武家屋敷、静かな雰囲気 ギャラリー、文化的店舗、静かなカフェ
野町・泉 住宅地に町家が点在、地元客が中心 地域密着型飲食店、小規模店舗
野々市市 若者が多い、大学が近い 学生向けカフェ、コワーキングスペース

「参照:金沢市公式ホームページ」
 

持続可能な店舗運営のための工夫

古民家や町家をリノベーションした店舗を持続的に運営していくためには、以下のような工夫が効果的です。

1. 省エネ・断熱対策

古い建物は断熱性能が低いため、冷暖房コストがかさむ傾向があります。床下や天井裏など目立たない部分に断熱材を入れる、内窓を設置するなどの対策で、エネルギー効率を高めることができます。金沢の厳しい冬を考慮すると、床暖房の設置も効果的です。断熱対策を施すことで、快適性が向上するだけでなく、光熱費の削減にもつながります。

2. 維持管理の簡略化

古民家や町家は定期的なメンテナンスが必要です。特に木部の腐食防止や漆喰壁のメンテナンスは重要ですが、日常的な維持管理の手間を減らす工夫も必要です。例えば、床材には掃除がしやすい無垢材を選ぶ、壁面には調湿効果のある珪藻土や漆喰を使用するなどの工夫が有効です。また、設備機器は省エネタイプを選ぶことで、ランニングコストの削減にもつながります。

3. 多目的利用の検討

店舗の持続的な運営のためには、時間帯や曜日によって使い方を変えるなど、多目的な利用を検討することも効果的です。例えば、日中はカフェとして営業し、夜はバーやイベントスペースとして活用する、定休日にはワークショップやセミナーのレンタルスペースとして貸し出すなど、収益源を多様化する工夫が考えられます。
 

伝統素材 現代的活用法 効果
土壁・漆喰 調湿機能を活かした内装仕上げ 空調効率の向上、結露防止、空気質の改善
格子・木虫籠 採光・視線コントロール、装飾要素 プライバシー確保、日射調整、金沢らしい意匠性
無垢材の床 断熱材と組み合わせた床暖房 快適な温熱環境、自然素材の風合い維持
坪庭(中庭) 自然採光・通風の取り入れ口 エネルギー消費削減、季節感の演出
金箔・九谷焼 アクセントとしての内装利用 地域性の演出、金沢文化の発信

「参照:古民家探訪」
 

 

まとめ:金沢の歴史を未来につなぐ店舗づくり

金沢市の古民家・町家を活かした店舗リノベーションは、単なる商業空間の創出にとどまらず、地域の歴史や文化を継承し、新たな魅力を創造する取り組みでもあります。伝統的な建築様式や素材を尊重しながら、現代の機能性や快適性を融合させることで、訪れる人々に特別な体験を提供できる空間が生まれます。
当社では、金沢市や野々市市の特性を熟知したデザイナーと、伝統工法に精通した職人が連携し、古民家・町家の持つ魅力を最大限に引き出す店舗リノベーションを提案しています。金沢の歴史ある建物を未来に継承しながら、新たな価値を創造する店舗づくりを、ぜひ私たちと一緒に実現しませんか。
金沢市内の古民家・町家リノベーションをご検討の際は、お気軽に株式会社インテリア縁までご相談ください。現地調査から設計、施工、アフターフォローまで、トータルでサポートいたします。

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